1. はじめに
愛犬の耳の中に生えている耳毛は、見た目だけでなく健康にも大きく関わる部分です。
耳毛のケアを怠ると耳の中のトラブルが増える一方で、適切に処理しないと逆効果になることもあります。
本記事では、耳毛の役割やケア方法、なぜ耳毛を無理に抜いてはいけないのかについて解説します。
2. 耳毛の役割
犬の耳毛には重要な役割があり、主に下記のような役割を担っています。
- 異物の侵入を防ぐ
耳毛は、外部からの異物(ホコリやゴミなど)が耳の中に入り込むのを防ぐバリアの役割を果たします。
特に長毛種や耳が垂れている犬種は、耳毛が比較的多く生えており、外部からの刺激を軽減しています。 - 耳の中の湿気を調整する
耳の中は暗くて湿気がこもりやすい場所です。
耳毛は耳の中の空気の流れを調整し、過剰な湿気を防ぐ働きを持っています。
湿気がこもりすぎると細菌やカビが繁殖しやすくなるため、耳毛があることである程度の湿度調整が期待できます。
3. 耳毛を抜いてはいけない理由
耳毛のケアとして「抜く」という選択肢を耳にすることがあり、諸説ありますが、個人的にはおすすめしません。
その理由を耳毛の役割や健康の観点から見ていきましょう。
- 炎症や感染症のリスクが高まる
耳毛を無理に引き抜くと、耳の中の皮膚が傷つきやすくなります。
その傷口から細菌が侵入し、炎症や感染症を引き起こすリスクが増します。
個体差もありますが、軽度の刺激でも皮膚トラブルが起こりやすい子もいるため注意が必要です。 - 耳の自浄作用が低下する
耳毛は異物を取り除く役割を果たしており、抜いてしまうと、耳の中の自浄作用が弱くなります。その結果、耳垢がたまりやすくなり、耳の中が不潔になってしまうことがあります。 - 痛みやストレスを引き起こす
耳毛を抜く行為は犬にとって痛みを伴います。
耳は犬にとっては敏感に反応してしまう部位であるため、大きなストレスとなり、耳を触られること自体を嫌がるようになってしまうかもしれません。耳のケアが難しくなると、さらに耳トラブルが増える悪循環に陥る可能性があります。
4. 実際にどうすればいいか
耳毛の処理をする際には、無理に引き抜かず、適切な方法でケアをすることが大切です。以下のステップで耳毛のケアを行いましょう。
- 耳毛カットの方法
耳毛が長くて耳の中に巻き込まれている場合、専用の耳毛カット用ハサミやトリミングバサミで慎重にカットします。
切りすぎないように気をつけ、耳の穴を塞いでしまわない程度に整えるのがポイントです。 - 耳の中の清潔を保つ
耳毛をカットした後は、耳の中の清潔さを保つために耳掃除を行います。
市販の耳洗浄液やペット用のイヤークリーナーを使用して、耳垢を優しく取り除いてください。
耳掃除は過度に行うと逆効果になるので、月に1〜2回程度を目安にしましょう。 - トリミングサロンでのプロのケアを検討する
基本的にはトリミングサロンや動物病院など、プロにお任せするのがおすすめです。
トリマーさんや獣医さんは犬の耳の構造や健康状態を理解しているため、安全で適切なケアを行ってくれます。 - 日常的な耳のチェックを怠らない
日頃から耳の中をチェックし、赤みや異臭、耳垢の異常がないか確認しましょう。
早期発見が耳トラブルの予防に繋がります。
5. 耳毛ケアの注意点
耳毛のカットや耳掃除は重要ですが、やりすぎると逆にトラブルを引き起こす可能性があります。
以下の点に注意してケアを行いましょう。
- 耳掃除は頻繁にしすぎない
耳を清潔に保つことは大切ですが、頻繁に耳掃除を行うと耳垢の自然な分泌バランスが崩れてしまうことがあります。
耳垢は耳の健康を保つために必要なものであり、過度なケアは逆効果です。 - 犬がストレスを感じないようにする
耳のケアは、犬にとってリラックスした状態で行ってください。
ストレスがかかると耳を触られること自体を嫌がるようになり、ケアが困難になります。耳毛のカットをする前に、優しく話しかけて落ち着かせてあげましょう。 - 症状がある場合は動物病院へ相談する
耳の中に異常が見られる場合(赤み、腫れ、悪臭など)は、自己判断で処理せず、動物病院で適切な診断と治療を受けることが重要です。 - 耳毛を切る際に他の部位を傷つけないように注意する
耳の中は暗い上に狭い構造になっています。また、嫌がる子は何かをきっかけに急に動いたりするため、ハサミで耳毛を切る場合には細心の注意が必要です。一度皮膚を傷つけてしまうと犬はトラウマになり、高確率で二度と毛を切らせてくれなくなります。
どうしても自宅で耳毛を切りたい場合
筆者としては耳毛の処理は定期的にプロにお任せするのが一番安全で確実だと考えています。
しかしながら、耳が荒れやすい子や耳毛が伸びるスピードが早い犬種の場合、頻繁にトリミングサロンや病院に赴くのも難しい場合があります。
特に老犬の場合は、なかなか思った通りに外出することも難しいため、ワンちゃんの身体的にも飼い主様の精神的にも負担になってしまうことがあります。
上記のようなケースの場合には、自宅で耳毛の処理をせざるを得なくなります。
自宅で耳毛を切る場合に一番気を付けなければいけないことがほかの部位や皮膚を切ってしまうことです。
傷つけられた嫌な記憶を犬は決して忘れないため、最悪の場合、耳すら触らせてくれなくなります。
筆者も何度か愛犬を傷つけてしまった経験があり、それ以降は耳に物が近づくことすら嫌になってしまいました。(今は何とか慣れてきて切らせてくれるようになりましたが、再度慣れさせるのにはかなりの労力を要しました。)
自分で耳の毛をハサミで切ることのリスクがあまりにも高かったため、傷つけないで自宅で耳毛を切る方法を長年にわたって模索し続けました。
そんな時かかりつけの獣医さんから、人間用の鼻毛カッターだと安全かつ切りやすいこと教えてもらいました。
そもそも鼻毛カッターは安全なのか?
鼻毛カッターを使用することはそもそも犬にとって安全と言えるのでしょうか?
鼻毛カッターは構造上、ハサミのように皮膚を傷つける恐れが限りなく0に近いため、自宅でのケアにはうってつけだと考えています。
実際にはどのような原理で安全に毛が切れるのかが気になり、鼻毛カッターをばらしてみました。
画像の1番が内刃で、2番が外刃になります。
どちらとも隙間が等間隔で空いており、内刃が回転することで内刃の隙間と外刃の隙間に入った毛が切れる仕組みになっています。
そのため、歯の隙間に入らなければ皮膚を傷つけることがないため、かなり安全に毛を切り取ることができます。
鼻毛カッター(耳毛カッター)の種類
耳毛カッターには電動と手動の2種類が存在し、個人的には手動がおすすめです。
というのも電動の場合、モーター音がそれなりにするため、耳に近づけるとワンちゃんが怖がることが多かったからです。
<手動鼻毛カッター>
<電動鼻毛カッター>
また、ここからが重要なのですが、電動と手動以外にも耳毛カッターを選ぶ際に注意しなければならないポイントがいくつか存在します。
ポイント1:耳毛カッターの大きさに注意する
ワンちゃんの犬種やサイズによって耳の穴の大きさはそれぞれです。
そのため、耳の大きさを考慮しないまま耳毛カッターを購入すると、実際に使用してみたら耳に入らない、なんてことになりかねません。
毛を切る部分の大きさが愛犬の耳の穴に入るサイズなのかを調べてから購入するようにしましょう。
ポイント2:刃の隙間に注意する
鼻毛カッターの購入者の声としてよく聞くのは「切れ味が悪くて全然切れない」や「毛が挟まっているだけ」などです。
実際に切れ味が悪い製品もあるかと思いますが、その多くは刃と刃の隙間に毛が入らないことが原因です。
下記の画像を見比べてください。
1番では刃の隙間が並行であるのに対し、2番では山なりに刃の隙間が作られています。
これにより、2番の方が刃と刃の間に毛が入りやすくなっています。
多くの人は上記の情報を知らず、価格が安いため、1番の方の耳毛カッターを購入して失敗します。
ワンちゃんへの慣らし方
いきなり耳毛カッターを耳に突っ込んでカチカチと動かして切ることはお勧めいたしません。
ワンちゃんにとって不快な場合はネガティブな経験としてとらえてしまう可能性が高くなります。
まずはおやつを使いつつ、時間をかけてゆっくり慣らしてください。
慣らすための簡単な手順を下記に記載しておきますので、ご参考にしてください。
手順1:まずはニオイを嗅がせる
まずは耳毛カッターのにおいを嗅がせます。
そしてすかさず褒めておやつをあげてください。
これにより警戒心が和らぎ、耳毛カッターに良い印象を抱きます。
手順2:耳に当てるだけ
いきなり耳の穴に突っ込むのはNGです。
優しく鼻毛カッター(耳毛カッター)を耳の外側に当ててください。
寒い冬場は金属が冷たくなってしまい、急に耳に冷たいものが当たるとワンちゃんがびっくりするので、人肌でしっかりと温めてからワンちゃんの耳に当ててください。
できたらすかさず褒めておやつをあげてください。
手順3:耳の穴に当てる
続いて耳の穴に耳毛カッターを入れます。
この時まだレバーを動かして毛を切らないでください。
また耳毛が引っ掛からないように気を付けてください。
できたら大げさに褒めておやつをあげてください。
手順4:レバーを動かして毛を切る
レバーをゆっくり動かして1回毛を切ってください。
何度もカチャカチャ動かさないように気を付けてください。
毛が切れていても切れていなくても大げさに褒めておやつをあげてください。
注意点
慣らしていくのにはしっかりと時間をかけてください。
個体差もありますが、手順1、2を朝夜1回ずつ3日間程度続けてもらえると慣れてくれるかと思います。
手順3も同様に朝夜で3日間、手順4も同様です。
何度も言いますが、焦らずにゆっくりと慣れさせてあげてください。
また、前述した通り鼻毛カッターの隙間が並行で隙間の間隔が狭い商品は、隙間に毛が入り込みにくく、相当剛毛でない限り切りにくいのでお勧めしません。
我が家で愛用している手動の鼻毛カッターは隙間が広めで切りやすい形となっています。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事のポイントをまとめると以下のようになります。
- 耳毛は外部からの異物侵入を防ぐバリアであり、湿度の調整にも役立つ。
- 耳毛を無理に抜くと、炎症や感染症、ストレスを引き起こすリスクがあるため避けるべき。
- 耳毛のケアはカットを基本とし、トリミングサロンでのプロのケアも検討する。
- 耳掃除は月に1〜2回程度が目安で、頻繁にしすぎないようにする。
- 耳の異常が見られたら早めに動物病院で診察を受けることが重要。
- どうしても病院に行けない場合には自宅で鼻毛カッターを使って比較的安全に耳毛を切ることができる
飼い主様とわんちゃんの双方が幸せになれますように。
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